今年(2025年)4月1日施行の建築基準法改正(令和4年6月17日公布)において、木造建築物の建築確認の対象となる規模(延べ面積)の引下げなどの見直しなどが行われています。
この改正により、一部の既存住宅では改正前は可能であった増改築や大規模なリフォームなどが、改正後の今年4月1日以降は行うことが困難な場合があると考えられます。
買主(借主)が、取引(購入または賃借)しようとする既存住宅で買ってから(借りてから)予定していた増改築等が行えないとなると、購入(賃借)目的が達成できないという大きなトラブルになります。買主あるいは借主は宅建業者によく確認して、今般の改正概要と取引を行う既存住宅等の増改築等に与える影響について注意をしておく必要があります。
【改正の主旨・目的】(出典:国土交通省)
すべての建築物に義務付けられる省エネ基準への適合や、省エネ化に伴い重量化する建築物に対応する構造安全性の基準への適合を、審査プロセスを通じて確実に担保し、消費者が安心して整備・取得できる環境を整備するため、木造建築物の建築確認検査や審査省略制度の対象を見直し、非木造建築物と同様の規模が対象になりました。
1.「都市計画区域、準都市計画区域、準景観地区等」の区域外における、木造建築物の建築確認の対象となる建築物の規模の見直し(建築確認対象の拡大)
(改正概要)
都市計画区域、準都市計画区域、準景観地区等の区域外において、「階数2以下、かつ、延べ面積500㎡以下」の小規模な木造建築物は、建築基準法改正前は、基本的に建築確認の対象外でした。しかし、今年4月1日の建築基準法改正後は、延200㎡以下の平屋を除き、建築確認の対象になりました。
(不動産取引における注意点)
今年4月1日以降に小規模な木造建築物について増改築などを行う場合、延200㎡以下の平屋を除き、確認申請が必要となります。
しかし、改正前に建築された小規模な木造建築物は、新築時は確認申請が不要であったことから、建物が建築基準関係規定に適合している証明資料等がなく、当該建物の増改築等の確認申請が困難になる(増改築等ができない)ことが考えられます。
取引する建物が、改正前に建築された「階数2以下、かつ、延べ面積500㎡以下(延200㎡以下の平屋を除く)の木造建築物」に該当する場合には、少なくとも、
➀取引建物は、都市計画区域等の区域外のため、新築時は確認申請不要であったことから、建築確認申請等が行われていないこと。
②取引建物は、令和7年4月施行の改正建築基準法により、増改築や大規模なリフォーム等を行う場合確認申請が必要なこと。しかし、増改築等を行う場合、当該建物の適法性を証明するものがないため、増改築等が困難になることが予想されること。
について、仲介業者から説明を受け、重要事項説明書に記載してもらい、買主がその旨を理解・承知したことを十分確認承知した上で取引を行うことが必要と考えられます。
なお、取引後に既存住宅等の増改築等を行うことを買主(借主)が予定している場合には、買主(借主)は予定する増改築等が取引の対象となる建物で可能かについて建築士等の調査を経て、買主等による増改築等が可能であるとの確認がなされた後に取引を行うのが適切と思われます。
2.「都市計画区域、準都市計画区域、準景観地区等」の区域内の木造建築物の、構造関係規定等の審査基準の変更(構造計算対象の拡大など)
(改正点)
都市計画区域、準都市計画区域、準景観地区等の区域内における、「階数2以下、かつ、延べ面積500㎡以下」の小規模な木造建築物の確認申請においては、建築基準法改正前は、建築士が設計・工事監理を行った場合は一部審査省略※1の対象でした。
しかし、今年4月1日の建築基準法改正後は、延200㎡以下の平屋を除き、構造関係規定等※2の図書の提出が必要となっています。
※1 審査省略制度:建築士が設計等を行う場合に構造関係規定等の審査が省略される制度
※2 延べ面積300㎡を超える木造建築物は、構造計算が必要
(取引における注意点)
今年4月1日以降、小規模な木造建築物について増改築等を行う場合、延200㎡以下の平屋を除き、確認申請において構造関係規定等の確認が必要となります。しかし、改正前の一部審査省略によって建築された建築物は、必要な構造関係規定等の書類がないことが考えられ、その場合、新築時の建築確認済証・検査済証の交付がされていても、構造関係規定等の審査が行えず、当該建物の増改築等が困難になる(増改築等ができない)ことが考えられます。
取引建物が、改正前に建築された「2階以下かつ延500㎡以下(延200㎡以下の平屋を除く)」の木造建築物に該当する場合は、買主は仲介宅建業者等を通じて、確認済証・検査済証等の保存の有無のほか、構造計算等に関する図書がないか(一部審査省略がされていないか)についても確認を行い、審査省略にて建築されている場合には、少なくとも、
➀取引建物は、改正建築基準法令和7年4月施行前に建築された建築物で、改正前の建築基準法の特例により、一部審査が省略されていて構造計算等に関する図書がないこと。
②取引建物で、増改築や大規模リフォーム等を行う場合、令和7年4月施行の改正建築基準法により、審査省略制度の対象外となるため、構造関係規定等の図書の提出が必要になり、提出できない場合は本件建物の増改築等が困難になることが予想されること。
について説明を受け、重要事項説明書に記載してもらい、買主がその旨を理解・承知したことを確認した上で取引を行うことが必要と考えられます。
また前記1と同様、取引後に既存住宅等の増改築等を行うことを、買主(又は借主)が予定している場合には、買主等による増改築等が可能であるとの確認がされた後に取引を行うのが適切と思われます。
3.木造戸建等で行う大規模なリフォームと建築確認手続きの見直し
大規模なリフォーム※3を行う場合、2階以下かつ延500㎡以下の小規模な木造建築物は、今年3月31日までは建築確認が不要でしたが、今年4月1日の改正後は、延べ面積200㎡以下の木造平屋建てを除き、建築確認※4が必要になります。※5
木造2階建て、又は延200㎡超の木造平屋建ての既存住宅等について、リフォームを行うことを前提に取引を行う場合には、買主(借主)が予定するリフォーム工事について建築確認が必要であるか(必要な場合は建築確認が得られるか)について、確認が得られた上で取引を行うことが必要と考えられます。
※3 建築基準法の大規模の修繕・模様替にあたるもので、建築物の主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根または階段)の一種以上について行う過半の改修等を指します。(水回りのリフォームなどは柱を建て替えるなど大規模にならなければ原則として当てはまりません。)
※4 建築確認手続きは、工事に着手する前に手続を終える必要があります。また、現行法に適合していない箇所があれば別途適合させる工事が必要な場合があります。
【参考】
・国土交通省周知チラシ:2025年4月から木造戸建の大規模なリフォームが建築確認手続きの対象になります。
https://www.mlit.go.jp/common/001765901.pdf
・国土交通省のホームページ・「建築基準法改正【令和7年4月1日施行】に伴う、建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」の詳細
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/r4kaisei_kijunhou0001.html