住宅・世帯数の現況(総務省発表)

総務省から、2023年に実施した「住宅・土地統計調査」について、今年4月発表の速報版に次ぐ確報版「住宅及び世帯に関する基本集計」が発表されました。住宅・土地統計調査(5年ごと)は、我が国の住宅とそこに居住する世帯の居住状況、世帯の保有する土地等の実態を把握し、その現状と推移を明らかにする調査です。この調査の結果は、住生活基本法に基づいて作成される住生活基本計画、土地利用計画などの諸施策の企画、立案、評価等の基礎資料として利用されています。

総住宅数は6,504万7千戸で、前回調査時の2018年から4.2%の増加となり、過去最多となりました。1世帯当たりの住宅数は1.16戸と、2013年以降は同水準で推移しています。

総住宅数のうち、空き家900万2千戸と、2018年(848万9千戸)と比べ、51万3千戸の増加で過去最多となっており、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%と、2018年(13.6%)から0.2ポイント上昇し、過去最高となりました。空き家数は一貫して増加しており、1993年から2023年までの30年間で約2倍になっています。

空き家のうち、人が住んでおらず使用目的がない「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は、385万6,000戸(+10.6%)と2018年から36万9,000戸増えています。総住宅数に占める割合は5.9%となっています。

空き家全体を建て方別にみると、戸建てが352万3,000戸、共同住宅は502万9,000戸でした。
戸建ては「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」が最も多く、80.9%を占めています。
一方、共同住宅の空き家は「賃貸用の空き家」が最多で78.5%でした。

現住居以外の住宅を所有している世帯は475万3,000世帯で、全世帯の8.5%。そのうち、空き家を所有している世帯は141万6,000世帯でした。

65歳以上の世帯員がいる世帯(「高齢者のいる世帯」)の推移をみると、2013年には2000万世帯を超え、2023年では2375万世帯となっており、世帯全体に占める割合は42.7%と、2018年に比べ、0.7%ポイント上昇しています。 75歳以上の世帯員がいる世帯は2013年に1000万世帯を超え、2023年では1380万8千世帯となっており、世帯全体に占める割合は24.8%となっています。 高齢者のいる世帯について、世帯の型別割合をみると、高齢単身世帯は32.1%(761万7千世帯)で過去最高に、また、高齢者のいる夫婦のみの世帯は28.9%(686万9千世帯)、高齢者のいるその他の世帯が39.0%(926万4千世帯)となっています。

これらのデータが、空き家増加の抑止と高齢者世帯の見守り施策が今後の重要な課題であることを裏付けていますが、不動産・住宅政策、高齢者福祉、相続登記、など複数の省庁にまたがる複合的な対応が必要です。周りでお困り・お悩みの方がおられたら、かかりつけの行政書士にご相談されるのも良いかもしれません。

出典: 「令和5年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)(https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/kihon_gaiyou.pdf

国交省が「不動産業による空き家対策推進プログラム」を策定しました

 国土交通省は6月21日、空き家等の流通促進を目的とした「不動産業による空き家対策推進プログラム」を策定したことを公表しました。

 空き家や空き地、マンションの空き室などの急増が課題となる一方で、二地域居住などの新たな働き方・住まい方へのニーズが高まっています。また、空き家等を放置すると使用が困難となったり、やがては周辺環境などに悪影響を及ぼすことから、「使える」空き家については、なるべく早く利活用を図ることが効果的と考えられています。
 そこで物件調査、価格査定、仲介と、流通・利活用まで一括してサポートできるノウハウを有している不動産事業者が、所有者の抱える課題を解決し、また新たなニーズに対応するといった際にノウハウを発揮できるよう、同省において「不動産業による空き家対策推進プログラム」を策定したものです。

 プログラムは「I 流通に適した空き家等の掘り起こし」と「II 空き家流通のビジネス化支援」で構成されています。
 「I」では、他業への取次ぎを含めた所有者への助言サービスの強化や、空き家所在地から離れた地でも相談可能な体制整備といった「所有者への相談体制の強化」、空き家専門家の育成のための業界研修の充実化、関係者とのネットワーク形成を念頭に置いた「不動産業における空き家対策の担い手育成」、その他「地方公共団体との連携による不動産業の活動拡大」や「官民一体となった情報発信の強化」を掲げています。
 「II」では、「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」、「”空き家管理受託のガイドライン”の策定・普及」、「媒介業務に含まれないコンサルティング業務の促進」」、「不動産DXにより業務を効率化し、担い手を確保」することを盛り込んでいます。

 不動産事業者を活用する方向性を打ち出している背景には、不動産事業者(正確には「宅地建物取引業者」 )はすべての都道府県で登録数が増えているにもかかわらず、市区町村単位で見ると不動産事業者のない自治体が247にのぼる実態があります。これらの地域は、人口減少に伴って日ごろの不動産流通の媒介需要が減っているため、不動産事業者が撤退減少する一方で、空き家等が増えている地域であるとも言えます。

 なお5月9日の本欄でお伝えした「低廉な空き家等の売買に係る報酬上限」の引き上げや、「長期空き家等の賃貸者における貸し主からの報酬上限額」の引き上げについて、法的根拠となる「昭和四十五年建設省告示第千五百五十二号の一部を改正する件」が6月21日に正式に公布され、施行は7月1日からとなることが確定しました。

 概要を再掲しますと、このような種類の不動産取引の媒介にかかる費用を勘案し、
・売買では、30万円の1.1倍を上限に報酬を受領できるようになります。
・賃貸では長期の空き家について、原則による上限(貸主・借主から合計で借賃1か月分の1.1倍)を超えて貸主から1ヵ月分の2.2倍を上限に受領できます。
・これに加え、「不動産業者による空き家管理受託のガイドライン」が策定・公表されました。空き家等の活用等に係る課題整理、相続に係る相談、空き家等の活用方針の提案・比較といったコンサルティング業務については、媒介報酬とは別に報酬を受けることができることが明確化されています。

 不動産事業者のコンサルティング業務への秩序ある進出支援の要素もありますが、空き家対策は、当事者である所有者お一人お一人にとって、そして国民経済的に重要な課題ですので、これらの施策が効果を発揮することを願っております。

(出典)
国土交通省「不動産業による空き家対策推進プログラム」:https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001749896.pdf
「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し(令和6年7月1日以降)」(概要版):https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001749923.pdf
「不動産業者による空き家管理受託のガイドライン」(概要版):https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001750008.pdf

PAGE TOP