三類型を「補助」に一本化——オーダーメード支援への転換今回の改正の最大の柱が、現行の「後見」「保佐」「補助」の三類型を「補助」一本に統合することです。この変更は単なる名称整理ではなく、制度の思想そのものを転換するものです。改正後は、「後見人」「保佐人」という概念が廃止され、全ての支援者が「補助人」という統一された呼称になります。これまで判断能力の程度によって機械的に類型を振り分け、包括的な権限を与えてきた仕組みに代えて、本人の福祉的ニーズに応じて必要な権限を個別に設計する方式へと転換します。具体的には、補助人に付与する権限を「遺産分割の代理」「不動産売却の代理」「施設入所契約の代理」など、必要な行為に限定して個別に指定します。つまり、ある方には遺産分割だけ、別の方には不動産処分と医療契約だけ、というように、本人の生活状況と必要性に応じた「オーダーメード型」の支援設計が可能になります。一方、改正案には「特定補助」という仕組みも盛り込まれました。判断能力を常に欠く状態にある方について、家庭裁判所が必要と認めた場合に限り、預金の払い出しや不動産取引など法定された重要な財産行為を取り消せる権限を特定補助人に付与できるものです。現行の「後見」が担っていた強力な保護機能を、より厳格な要件のもとで残す仕組みといえます。この一本化により、「支援が弱くなるのでは」という懸念を持つ方もおられるかもしれません。しかし重要なのは、権限の強弱ではなく、本人の意思と残存能力を最大限尊重しながら、必要な支援を必要な場面だけで受けられる制度に変わるということです。行政書士の実務においても、申立て前の段階でどの権限が必要かを丁寧に聴き取り、設計する力がこれまで以上に求められるようになります。なお、本改正条項の施行は成年後見部分が公布の日から2年6カ月以内(2028年度中の見込み)です。※本稿は公表済みの改正民法(2026年6月17日成立)および報道資料等をもとに執筆しています。政省令・最高裁規則等の詳細は今後確定するため、実務利用に際しては最新情報をご確認ください。シリーズ 記事一覧第1回 「終わらない制度」から「終われる制度」へ——改正民法成立の意義第2回 現行制度の何が問題だったのか——三類型の硬直性と自己決定権の侵害第3回 三類型を「補助」に一本化——オーダーメード支援への転換(←この記事)